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「人はなぜ逃げおくれるのか」


  広瀬弘忠氏著
全239ページ
700円+税
新書

■この本を一言で表すと
「人が逃げ遅れる要因は正常性バイアスにある」

■何故この本を手に取ったか?
「災害が起きたとき、具体的な行動をとるか否かと言われたら、
その危険が確定している場合はともかくとして、
私自身がそう簡単に動かないであろうと、予想できる。
これはどういう心理からくるのか、調べてみたくなったから」


■流れ
災害とは何か

非難行動について

災害予知と被害の相関

すぐ「パニック」になるという嘘

生き延びる確率を上げる条件

ボランティアおよび復興


■レビュー■
『いかに激しく自然が猛威をふるったとしても、
そこに人間の営みがなければ災害はない』(P. 21)
大きな地震がおこったとしても、
そこに人がいないなら、災害として認識されるはずもありません。
地球上でおきる災害は、
人の生活に密接しているからこそ起きているのです。

『防災のジレンマ』(P. 61)
災害がいつ、どこで、どのようにして、起きるのかわからないことが、
対策を立てようとしても困難な状況を作り出しています。
これは特に地震についていえることです。
よって、災害に備えるためには、
過去の経験から予想されうる事態を想定し、
過剰に設備などに投資しなくてはなりません。
失敗は許されないからです。

そして、その設備などへの投資が、
どのようなメリットがあったのか、ということは
目に見える形では表せないことがほとんどです。
よって、喉元すぎれば熱さを忘れ、
災害対策に充てる費用は、削減されがちになります。

『防災の目的は、被害総額の減少ではなく人命損傷の軽減』(P. 68)
被害を額面で考えると、
その被害に見あう程度の防災で良い、
ということになってしまいます。
確かに、受ける被害が物的なものに限られるなら、
その通りであると思います。
しかし、人的被害に関しては、
そう簡単に数値化できるものではありません。
だからこそ、防災のメリットが目に見えにくくても、
おろそかにする、という選択肢はとれないのです。

もちろん、いくらでも費用をかけていい、
ということでは、生活が傾いてしまいます。
それでは本末転倒ですから限度は設けなくてはなりません。
しかし、最初から何もしない、というのは論外なのです。

 

『パニックはまれだ、というのが専門家の「常識」なのである』(P. 15)
災害時に心配なことのひとつが、パニックです。
例えば、多数の人が存在する地下鉄内において、
パニックが発生すれば、たちまち多くの怪我人が出てしまうでしょう。
それが恐ろしいので、避難が必要なときには、
ソフトな物言いが求められるのです。
しかし、あまりにもソフトに伝えすぎると、
返って危険が増す可能性があります。

『人びとは警報を受け取っても、自分たちに危険が迫っていることを
なかなか信じようとはしない。
そのため、直前の警報が外れたり、警報のメッセージに、
少しでも曖昧なところや、矛盾したところがあったりすると、
警報の信頼性に疑いの目を向ける傾向がある』(P. 114)
つまり、危険性を論じるよりも、
警報を発している組織の不確かさに目が行く、ということです。
これはつまり、自分に危険が及ぶかもしれない、ということよりも、
相手の非に関心がいってしまっている状態です。

なぜ、このようなことが起きるのかといいますと、
正常性バイアスが働くためです。

『ある範囲までの異常は、異常だと感じずに、
正常の範囲内のものとして処理するようになっているのである。
このような心のメカニズムを”正常性のバイアス”という』(P. 12)
危険が迫っているというが、不確かさがすこしでもあれば、
日常を壊してまで行動に移したくないという真理が働きます。
よって、たとえば非難勧告が出ていた場合、
周囲を見渡して、誰も非難してなかったら
「ここは大丈夫なんだろう」と勝手に安心してしまう傾向にあるのです。

実際に、避難勧告後、避難を始める家が出ると、
その近辺の住人はこぞって避難所に集まるようになります。
隣人が具体的な行動を取ることによって、正常性バイアスが崩れ、
その身に危険が降りかかろうとしていることを察知するからです。

『パニック発生の四つの要件』(P. 140)
多くの人たちが緊張した状況で、
危機が差し迫っているという意識を共有していること、
危機を逃れる方法が存在すると信じられること、
脱出は可能だが安全は保証されていないこと、
人々の間でコミュニケーションが成り立たない状態になっていること、
以上の四つです。
これらの要因が重ならなければ、
パニックというのは起きにくいようで、
実際にこれら四つの条件が同時に満たされる状況というのは、
言われてみれば、確かに多くは無いと考えられます。

 

 

『破壊された港湾機能が復旧するまでの間に、
”世界の神戸”は、東京や大阪、韓国の釜山などに、
その機能を吸収されてしまった』(P. 200,201)
神戸は、震災から復興するまでに約5年かかりました。
それで元通りになったかというと、内実はそうではないのです。
港が使えない間、それを何年も待っていてくれる業者はありません。
別のところと仕事をしていれば、そこで人間関係もできるでしょう。
そうなれば、神戸が復興したからといって、
その人間関係を清算してまで神戸に戻ってきてくれる、というわけには
なかなかいかないものです。
震災の復興が大変なのは、
建物を元通りにするだけでも大変なのに、
仕事や人の流れまで、元に戻すことはもっと大変である、
という点にあります。


■反論・誤植・注意点など■
『「インフルエンザのワクチン接種を受けた人はどのくらいいるか、
手を上げて下さい」と聞いてみた。
一人として手を上げた学生はいなかったのである』(P. 38)
これを医療機関にわざわざ出かけていって、
一回2000~5000円ほどの注射を二回しなければならないコストが、
インフルエンザを予防できるメリットを上回っているからだと、
著者は想像しています。

なるほど、そうとも取れますね。
しかし、私もインフルエンザならワクチンの接種は今後もしないでしょう。
以前、新種のインフルエンザが流行したときも、私は受けませんでした。
それは何故か、といいますと、インフルエンザには
みなさんもご存じの通り、型がいくつもあって、
インフルエンザワクチンを接種したところで、
完全に防御できるわけではないからです。
接種したタイプと別のタイプが流行れば、
ワクチンは意味をなしません。

さらに、ワクチンというものは、
これまで全ての種類において、死者が出ています。
弱らせたとはいえ、ウィルスを体内に入れ、
免疫をつくらせるわけですから、当然そういうリスクがあるのです。
そんな危険を冒してでもワクチンを打つのは何故か、というと、
病気にかかったときの被害が大きいからです。

インフルエンザに関してですが、
流行のものと接種したものが違うかもしれないし、
接種したことによる被害もあるかもしれない、
そういった理由から、私にはメリットが薄いように感じます。
誰がワクチンを受けようと、それは自由なので構わないのですが、
すくなくとも私は面倒だからとか、接種にお金がかかるからとか
そういう理由だけで受けないのではないので、
手をあげなかった学生の中にも、そういう考えの人がいるかもしれません。

こういった話は推測の域を出ません。
著者は、この場で学生の何人かに理由をきくか、
アンケートをとるべきであったと思います。



■最後に■
東日本大震災の津波を見て、
私の場合は逃げられない可能性の方が高い、と思いました。
津波がしょっちゅうくるならともかく、
100年に一度の大津波なら、ほぼ全ての人は未経験なのです。
ですから、正常性バイアスが働いて、
日常生活を守ろうとするのは
当然の話であると言えます。

よって、大津波警報が出ているのだから、
はやく逃げれば良かったのに・・・、というのは、結果論です。
沿岸付近ならともかくとして、津波などきたことない地域なら
割れたガラスの片付けに気をとられても仕方ありません。
家の掃除をしてしまった人を誰が責められるというのでしょうか。

とはいえ、震災において誰かが責任をとってくれるわけではありません。
自分で守るしかないのです。それもまた真実です。
津波にさらわれてしまった場合、誰かのせいにしても意味はありません。
すべて自己責任なのです。

実は、百年に一度の津波の教訓を先人たちが残してくれています。
それは、「失敗学のすすめ」の95ページにあります。

三陸海岸の石碑に、
「ここより下に家を建てるべからず」と書かれているにも関わらず、
そのすぐ下に家が建っている写真があるのです。
これは百年に一度の津波への教訓は、
日常の利便性の前になすすべがない、ということでもあります。
この姿は、そこに家を建てている人だけの話ではありません。
私を含め、ほとんどの人に共通する姿、だと思います。


■評価■


 

レビューNo. 0695
評価年月日:2011年4月6日



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