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「希望格差社会」


  山田昌弘氏著
全255ページ
1900円+税
単行本

■この本を一言で表すと
「日本社会に今まさに起こっている厳しい現実を浮き彫りにした本」


■何故この本を手に取ったか?
「希望格差社会というタイトルに興味が湧いたので」


■流れ
リスク化する日本

二極化する日本

職業の不安定化

家族の不安定化

教育の不安定化

希望の喪失


■レビュー■
『高度成長期から1990年頃までの社会では、
生活基盤が安定しており、予測可能性が高く、
生活目標が明らかであり、かつ、ほとんどの人が
その目標に到達可能であった。
だから、多くの人々は、「希望」を持てた』(P. 15)
昔は、給与が右肩上がりでした。
ですから、相手が現在それほど裕福でなくても
いつかは上がると予測して結婚出産などができていたのです。
それが、昨今崩壊しかけており、
一流企業でさえ、つぶれることが起こりうる、
また経営悪化の際には、リストラされるかもしれない
というように予測困難な社会が訪れました。
晩婚化や少子化が進んでいるのも、
そういった時代背景があるためです。
経済基盤に不安があるときには、
扶養家族を増やすことはできません。

『世代問題としての二極化』(P. 115)
40代以上の労働者の多くは、
終身雇用が崩壊しかけた現代にあってなお、
「オールドエコノミー」の世界に生きている、と著者はいいます。
それは、いまでもそれなりに企業が雇用を守ろうとしているからであり、
その分、あたらしい正社員を雇えないから
非正規の労働力として、新たに社会に出てきた若者を採用している
という構図が成り立っています。
大学を出て、会社に入れば一生安泰だったのは過去の話となりました。

『パイプライン・システム』(P. 162)
これは大まかにいえば、日本の学校教育のことを指しています。
著者の造語ですが、言い得て妙なのでそのまま使わせて頂きます。
中学、高校、大学、大学院と
そのコースが分岐する時点で、己の能力に合った学校に進み
就職する際には、卒業した学校の学歴に合った職につけていました。
効率的に職業につくことができる利点が、
このパイプライン・システムにはあるのです。

このシステムの問題点は
『別のコースに乗りたければ、
もう一度パイプの分岐点に戻ってやり直すしかない』(P. 164)
ということなのですが、最近になって、
もっと大きな問題が出てきました。
パイプに漏れが発生したのです。

『多くのパイプラインにおいて、
学校での成績は就職にはほとんど役立たない、
知識が役立たないということでなく、
学校の勉強で努力していくら良い成績をとっても、
それが就職という形で報われないということである』(P. 180)
と、指摘されています。
学生にとっては就職は人生の重要な問題であるからこそ
これまで職があることを信じて頑張ってこれたのです。

しかし、学校での成績が就職の際に有利にならないのであれば、
学校で懸命に勉強をするよりも、
多くの経験を積むために、サークル活動、アルバイトや海外留学
インターンシップ、予備校での資格取得などに勤しみ、
大学の勉強など二の次となることは目に見えています。

大学での勉強が学生の本分であろうに、と
なげく方がいらっしゃるかもしれませんが、
ちゃらけて見えるかもしれませんが若者たちは、
必死に考えて行動しています。
その考えた結果が、学問以外に向けて活動することなのです。
そして、フリーターにならず正社員として働くという点で
それらの行動は間違いではないのですから、咎められません。

『多くの青少年は、「大学に行っても仕方ないが、
大学に行かないともっと悪くなる」という理由で進学する』(P. 180)
かつての学士様は、
現在この程度の位置づけになってしまいました。

結局、学位なんてものが生活の保障をしてくれるわけではないのです。
学士、修士、博士が希少価値などなく
そのあたりにごろごろしているのですから、
やはり最低でも大学くらい出ていないと、
本当にまともに就職できない危険が高いのです。
だって、学士というものが誰でも持っているような
運転免許並みの資格となった現在では、
就職活動において、学士というものは、
あっても有利ではないが、ないと相当不利であることに違いありません。

ゆえに、仕方なく大学くらいは出ておくか、となり、
親もそれを望むために、本人が別に学問をしたくて大学にいくのではなく
就職のひとつの手段として大方の日本人は大学にいくことになります。

 

よって、いま問題となっている学力低下は、
学問のためでなく、就職のために
大学くらい出ておこうとする人が増えたことと、
『学校で勉強しても就職にむすびつくとは限らず、
「勉強しても仕方ない」という事実が
厳然と姿を現しているからである』(P. 186)
ということから発生している問題と言えます。

『教育は手段なのであって、
それ自体が目的ではないことを肝に銘じるべきである。
何事も、それをすること自体が目的となってしまうと、
一種の「宗教」となってしまうのだ』(P. 160)
学力を上げるための目的は、人格の形成ではありません。
生活の向上のためなのです。
勉強はそれを達成するためのひとつの手段にすぎません。
一流大学卒の学歴で将来が安泰だなんて、
いまどき本気で考えてる人がいるとしたら、
本質的に一種の新興宗教とかわりありません。
しかし、この学歴信仰は、長年日本を支配しており、
本人たちも気づかぬうちにこれにとらわれてしまっていました。
ただ、最近は、学歴があてにならない時代になり、
これらの学歴信仰は薄れつつあります。

『人々の自由な行動が、リスク化や二極化をもたらす原因』(P. 20)
人びとの行動が画一化されていれば、
次の波がわかりやすいために、
将来の予測が比較的可能だったのです。
しかし、現在では自由になりすぎ、
またその傾向はこれからも止められないため、
将来の予測がしにくく、リスク化、二極化は止まらないでしょう。

『現在は、リスクをとることを強制させられる社会である』(P. 37)
自由な社会がやってきたために、
すべての選択は自分が希望したことにされています。
ゆえに、それに伴う結果も自己責任とされてしまいます。
ひいては、
『生活の格差は、実力の差であるから「納得するべきである」
というイデオロギー(これをメリトクラシーという)に依存している』(P. 56)
というように、
格差ができたのも、本人の頑張りが足りないからである、と
現在、勝ち組にいる方々に都合の良い解釈が成立します。
一応の筋が通っているので、受け入れやすく、
また、この論理に逆らおうとする者はあまりあらわれません。
かっこわるいからです。
というのも、反論すれば自分の努力が足らないのを
詭弁でなんとかしようとしているみたいに周りに思われてしまうからです。

よって、こういう「反論するとかっこわるい」論理は納得してもしなくても
世間に受け入れられやすいのです。

しかし、1990年までならば就職できていたレベルの人でも
いまは正社員採用のレベルが上がってしまったために
ボーダーラインより上であってもはじかれています。
はじめから努力してない人、
本当に努力の足りない人もいるかもしれませんが、
いま一番問題となっているのは、
特筆すべき才能はなくとも
昔なら正社員になれるくらい努力してきた人たちが
多数正社員となれずにいる現実なのです。
彼らは経済的な基盤がないために、
結婚など考えられず、いくら少子化を騒いだところで
どうにもならないし、できないでしょう。

『一度ついてしまった専門能力格差は、
努力ではなかなか埋まらない』(P. 110)
キャリアがないからキャリアとなるところで働けない、
だから、いつまでたっても上に行けない。
そこには、『努力の限界』(P. 236)
があるのです。

『努力すればなんとかなると言われ続けて勉強してきたが、
結局、職や生活の見通しもつかない状態になり、
それも「努力しなかったからだろう」
と言われるのがもっとつらい』(P. 238)
と、語る若者が本書に紹介されています。
この若者が、1980年代に就職を希望して
正社員になれないだろうというのなら、
それは確かに、この若者の努力不足でしょう。
しかし、いまこの若者の努力不足を批判している世代の正社員に
当時この若者以下の能力だった者はたくさんいるはずです。

時代の趨勢もありますし、
また、他人をうらやんでばかりいてもいけませんが、
現在の状況は、一概に若者の努力不足であると、で
片付けられるものではないのは確かでしょう。

 

『弱者がまとまることが難しくなる』(P. 44)
なぜなら、現代のリスクは確率的に降りかかるものだからであり、
また、おのおのの生活状況がまったく異なるので、
連帯意識の生じようがないのです。
「弱者になるかもしれない」という意識だけでは、
連帯することは不可能である、というのが著者の主張であり、
その通りであると考えれられます。
なぜなら、多くのは人は、「自分は転落しなくて済む」と思っていて、
実際に転落しない人がいるわけですから、
そういう一種の勝ち組にいる人が、運悪く負け組に転落した人をみて、
同情はしても、ともに戦ってあげるというわけにはいかないのです。

 

『「量的格差(経済的格差)」は
「質的格差(職種やライフスタイルの格差、ステイタスの格差)」を生み、
そこから「心理的格差(希望の格差)」につながる』(P. 15)
ゆえに、収入の多い男性を結婚相手として希望する女性がいるのは
当然のことなのです。
しかし、
『世帯の生活水準の豊かさは、もう夫の収入だけでは決まらずに、
家族形態、特に、夫婦の働くパターンによって決まるようになった』(P. 63)

とあるように、女性が男性とともに働くか否かが、
豊かな生活の分かれ道であるといえます。

『強者(職業世界での)が強者を選び(夫婦の場合)、
強者が強者を作り出す(親子の場合)、その対極で、
弱者は弱者を選ぶ以外に選択肢はなく、
弱者は弱者しか作り出せないという実態が生じている』(P. 66)
医師同士、弁護士同士、公務員同士といった、
いわゆる高所得な人同士で結婚する傾向がみられます。
そのために、家族単位での格差はさらに広がるでしょう。

『希望という感情は、
努力が報われるという見通しがある時に生じ、
絶望は、努力してもしなくても
同じとしか思えない時に生じる』(P. 193、194)
絶望が努力する人を減らし、
ひいては、国力が減衰することが容易に想像できます。

そういった絶望した人たちは、
現実から逃避することが多々あります。
『希望なき人の絶望と逃避』(P. 206)
『嗜癖(アディクション)』(P. 206)
いわゆる、「ひきこもり」というもので、
そこで自分の趣味に没頭することが多いといいます。
バブル期にひきこもりが現在ほどいなかったことを考えると、
ひきこもりの問題も、元をたどれば、
格差問題にいきつくといえそうです。

『苦労の免疫理論』(P. 211)
苦労は買ってでもせよ、と
昔の人は言いました。
しかし、これは報われる苦労のことです。
苦労しても、その先に目標達成があるからこそ、
人はつらい状況に耐えられるのです。
しかし、
報われない苦労なら、しない方がいいに決まってます。

『その職に就いている経験を生かそうとする人に
報いるシステムを作ることが肝要なのである』(P. 242)
アルバイトをしている人のスキルが向上したときは、
相応の給与を持って報い、
かつ、仕事のレベルも上昇させてキャリアアップできるようにすることが
単純作業でも希望を失わずに働ける条件であると思われます。



■反論・誤植・注意点など■
特になし


■最後に■
格差社会、晩婚非婚化、少子化などの原因が
一挙に理解できる内容の本となっており、
本書の参考文献の示し方が他の著書に比べて上手であったため
孫文献まできちんと引けてうれしく思いました。

現在は格差が広がりつつある状況です。
しかし、これは仕方のないことです。
というのも、これまでどの国も大体共通して、
平和な時代には富が子孫へ受け継がれるために格差が進み、
戦争などでそれが崩壊して、ひとつの国の中を見る限りでは、
貧富の差が縮まるということが起こってきたからです。
日本も戦争をしなくなって久しく、格差ができてもおかしくないのです。
むしろ、戦後65年という期間を考えると
極度の二極化社会になってもおかしくないのに、
よくここまでもちこたえているな、と感心すらします。
世界で唯一成功した社会主義国家といわれるだけのことはあります。

ただ、それはいつまでもつづくものではありません。
戦争でもないかぎりは、格差社会への移行は止めようがないでしょう。
とあるフリーターが戦争を望んでいました。
現在裕福な生活をしている人は、
彼のことを気でもふれたのかと騒ぎたてるでしょう。
しかし、彼の立場から考えてみれば、
格差を縮める戦争の本質をよく見抜いており、
いたってまともな思考をしていると思います。
もちろん、だからといって格差是正のために戦争なんて
まっぴらごめんですけどね。

格差社会となることを批判しても仕方ないように思います。
ただ、少子化の原因として、フリーターなどが取り上げられて
彼らの努力不足だ、と騒ぐのも筋違いであるということだけ
心に留め置くべきかと思います。

ちなみに、本書は文庫版が出ています。
希望格差社会(文庫版)



■評価■


点数合計 25点/30点満点

(1)読みやすさ 4点 
読みやすい

(2)情報量 3点 
60-120min

(3)成長性 4点 
まずは現実を知ることが
いまの若者のすべきことであると思う
時代の大勢や自分の現状を知らずして、
具体的な対策はたてようがない

(4)実用期間 5点 
これからの社会は、古き良き時代に逆行することは
まずありえないことがわかった。
むしろ、現在の状況がさらにすすみ、
格差は大きくなる一方であると考えられる
少なくとも10年以内には、この流れは止まらない

(5)インパクト 4点 
世代間格差や、世代の中での格差は
実感できていることであるが、
あらためて突きつけられると
それなりにインパクトがある

(6)信頼性 5点 
社会学であるために、著者の意見も含まれるが、
それを差し引いても、
その根拠を示していることや
参考文献の多さから言って
信頼できる内容であるといってよい


レビューNo.0324
評価年月日:2010年12月9日



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